大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和58年(行ツ)96号 判決

上告人

土居栄治(X)

右訴訟代理人弁護士

山原和生

被上告人

高知県知事

中内力(Y)

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山原和生の上告理由一について

論旨は、要するに、鉱業等に係る土地利用の調整手続等に関する法律(以下「調整手続法」という。)五〇条は原処分に対する取消の訴えを禁止する趣旨と解すべきであるから、採取計画認可処分の無効確認を求める本件訴えが同条により許されないとした原判決は、同条の規定の解釈適用を誤つたものである、というのである。

採石法三九条一項は、同法三三条の採取計画の認可に係る処分等に不服がある者は公害等調整委員会(以下「公調委」という。)に対して裁定の申請をすることができる旨定めているところ、調整手続法五〇条の規定によれば、公調委に対し裁定を申請することができる事項に関する訴えは、裁定に対してのみ提起することができるものとされている。すなわち、岩石の採取計画の認可等の処分については、採石業と一般公益又は農業、林業その他の産業との調整を図るため、行政委員会として各省から独立した権限を有する公調委(公害等調整委員会設置法二条ないし五条参照)がその不服申立に対する裁定を行うものとされているところ(調整手続法一条一項二号)、調整手続は、その裁定手続について、裁定委員の除斥・忌避の制度(三条ないし六条)審理の公開原則の採用(三二条)、関係人等の審問手続等についての民訴法の準用(三四条)など、通常の不服審査の場合と比べより慎重な準司法的手続を採ることとしたうえで、このような裁定手続による検討が予定されている処分(一条一項二号)については、原処分そのものについての出訴を禁止し、裁定に対する訴訟の提起のみを認める(五〇条)とともに、その訴訟については一審級を省略し東京高等裁判所の専属管轄とする(五七条)などの特例を定めているのである。

このように調整手続法五〇条の規定は、同法一条一項二号所定の不服の裁定の対象となる処分については、すべて公調委による裁定に委ねてその当否を検討すべきであるとの前提に立って、処分に不服のある者は必ずこの裁定を経たうえで裁定に対してのみ訴訟を提起すべきものとしているのであり、かかる法の趣旨及び同条が単に「裁定を申請することができる事項に関する訴」と規定し、取消訴訟と無効確認訴訟とを区別していないことからすれば、同条は、裁定を申請することができる処分それ自体に対しては、その無効確認を含め一切の抗告訴訟の提起を禁止しているものと解するのが相当である。右と同旨の見地に立つて、本件採取計画認可処分の無効確認の訴えを不適法とした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同二について

所論の点に関する原審の措置に、所論の違法があるとはいえない、論否は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 長島敦 坂上壽夫)

【上告理由】〔略〕

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例